東京高等裁判所 昭和44年(ネ)967号 判決 1970年7月13日
控訴人 江北西部土地区画整理組合
右代表者代表理事 矢萩三保三
右訴訟代理人弁護士 三谷清
被控訴人 油井国子
右訴訟代理人弁護士 小林澄男
同 苅部省二
同 植田義捷
主文
原判決を取消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は一、二審を通じすべて被控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は一、二審を通じて被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張は、左に掲げるほか原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
控訴代理人は次のとおり述べた。
被控訴人は本件更正登記手続について被控訴人を右手続に利害関係ある第三者として承諾を求めて本訴に及んでいるが、控訴人の定款七一条に「換地計画において換地を定めるに必要な従前の宅地各筆の地積は、昭和三三年一月一日現在の土地台帳地積に測量増を按分して加えた地積によるものとする。」と定められ、右測量増とは、土地区画整理施行地区全体の実測による総面積(道路等の公共施設で区切られた区域ごとの実測で、宅地各筆ごとの実測の総計ではない)と右基準日の土地台帳上の各筆の地積の合計との差をいうのであり、「測量増を按分して加えた地積」とは、右測量増を、右基準時の各筆の台帳地積に応じて按分し、これを右台帳地積に加えた地積をいうのである。換地計画の基準となる従前の土地の地積は右のようにして定められるのが原則であるが、更に定款によれば、土地所有者が所定の期日(昭和四〇年五月一七日)までに控訴人に申告すれば、控訴人が現地について査定した地積をもって従前の地積とすることができることとなっているが、本件土地については右申告もなかった。以上のように控訴人は、もはや本件土地の登記簿上の地積の如何については利害関係はなく、したがってその更正登記手続について法律上の利害関係もないので、そのあることを前提として右登記手続に控訴人の承諾を求める本訴請求は理由がない。
証拠関係≪省略≫
理由
一、当裁判所も原審と同様、本件土地の所有権は被控訴人にあり、右土地の登記簿に表示された地積は、その実測面積と一致していないので、同人は右登記の地積につき更正登記手続をなしうると判断する。その理由は原判決理由第二、三項記載のとおりであるから、これを引用する。
二、被控訴人は、右更正登記につき、控訴人は法律上の利害関係を有するものであるから同人に右登記手続につき承諾を求めると主張するが、地積更正登記は、元来権利変更の登記には当らないので不動産登記法第六六条、第五六条の適用はないのみならず、更正登記について承諾を要する第三者は「登記上ノ利害関係」を有する者にかぎられると解せられるところ、控訴人は本件土地の登記簿上の権利者ではないので右のごとき第三者とはいえない。したがって、控訴人に対し右登記手続について承諾を求める被控訴人の本訴請求はその余の判断をするまでもなく失当であり棄却を免れないといわなければならない(なお、地積更正の登記につき、特に利害関係のある第三者のあるときには、その承諾を得てこれをなす取扱いのなされることがあるとしても、控訴人には以下述べるようにかかる利害関係もない。即ち、本件土地が控訴人によって進められている土地区画整理事業の施行地区に属していることは当事者間に争いがないが≪証拠省略≫によると、控訴人組合定款七一条には「1、換地計画において換地を定めるに必要な従前の宅地各筆の地積は、昭和三三年一月一日現在の土地台帳地積に測量増を按分して加えた地積によるものとする。2、前項に規定する日現在の土地台帳地積について、実地地積が著しく相違する場合においては、別に定める期日までに申告したものについては、当該土地及び隣地の所有者の立会のもとに理事の査定した地積をもって前項の地積とみなす。」と規定されており、右1項の「測量増」とは、土地区画整理施行地区全体の実測による総面積と右地区内における各筆の昭和三三年一月一日現在の土地台帳上の地積の総計の差をいい、右「測量増を按分して加えた地積」とは、右測量増分を、前記基準日における各筆の土地台帳地積に按分比例してこれを右台帳地積に加えた地積をいうものであること、なお右測量においては各筆ごとではなく公道等によって区切られた地区ごとに行うこと、右2項の申告の日は昭和四〇年五月一七日と定められたが本件土地についてはなんらの申告もなされなかったこと、そこで、控訴人においては本件土地の換地計画として昭和三三年一月一日現在におけるその土地台帳地積一〇七坪(この点争いない)と本件土地区画整理における測量増の各筆についての増加分一割増しの地積をもって本件土地の「従前の土地地積」とし、これに基づきすでにその仮換地を定めているのであって本件土地の登記簿上の地積が今後更正されても本件土地区画整理事業の施行には法律上の影響はないことが認められる。
よってこれと結論を異にする原判決を取消し、被控訴人の請求を棄却し、訴訟費用につき、民事訴訟法九六条八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 川添利起 裁判官 荒木大任 田尾桃二)
<以下省略>